| 部屋編その5(2部) ミライ「キャーッ!!」 ヤライ「!?」 ヨウジ「……今の悲鳴は……ミライ……?」 ヤライ「とにかく行ってみよう!」 ◆ ミライ「ユ、ユウキ兄さんッ!」 ヤライ「どうしたミライ!」 ミライ「ヤ、ヤライ兄さん! ユウキ兄さんがぁっ!」 ヤライ「落ち着け! 何があった!」 ミライ「そ、それが……、 出口を探すため、ユウキ兄さんと2人でキッチンを探索していたら……」 ヤライ「していたら……?」 ミライ「ユウキ兄さん……、ぬかどこに落ちちゃったの!」 ヤライ「な、なんだってー!?」 ミライ「ホラ! ここよ、ここ!」 ヨウジ「うわ! ふけェ! ぬかどこってレベルじゃねーぞ!」 ヤライ「底が見えないな。まるで落とし穴。 ユウキのヤツ、生きてるといいが……」 ミライ「え、縁起でもないこと言わないでよ!」 ヤライ「す、すまない……。 ところでユウキが落ちたとき、どの程度の時間を置いて音が聞こえた?」 ミライ「え?」 ヤライ「ユウキが落ちたのなら、底に着いた瞬間、音がするはずだろ? 落ちてから音が聞こえるまでの時間で大体の深さがわかる」 ヨウジ「そ、そういうことか! ――どうだった? ミライ」 ミライ「え、えぇと……。ご、ごめんなさい。 びっくりしちゃってそれどころじゃなかったの……」 ヤライ「仕方が無い。もう一度何かを落としてみよう」 ミライ「そ、そうね! それじゃあ何か落とす物を探さないと――」 ヤライ「ヨウジのスタイラーでいいだろ」 ヨウジ「よくねーよッ!!」 2008/03/01(土) ヤライ「うーむ……。 とりあえずスプーンを落としてみたはいいが何も聞こえないな」 ヨウジ「よっぽど深いってことか」 ミライ「ど、どうしよう。このままじゃユウキ兄さんが……」 ヤライ「こうなったら直接下りてみるしかないな。このロープを使おう」 ヨウジ「兄貴が行くのか?」 ヤライ「当たり前だ。かわいい兄妹たちを危険な目には合わせられん」 ミライ「ヤ、ヤライ兄さん……」 ヨウジ「ヤライ兄ィ……」 ヤライ「いざゆかん! ユウキを助けに――って、うわぁぁぁぁッ!!」 ミライ「ヤ、ヤライ兄さん!」 ヨウジ「な、なんだ!? ぬかどこから何か飛び出してきたぞ!」 ヤライ「がはっ!」 ミライ「だ、大丈夫ヤライ兄さん!?」 ヤライ「う……、あ、ああ……。なんともない。 それより今飛び出してきたものはいったい……」 ヨウジ「お、おい! 2人とも、こっちへ来てくれ!」 ヤライ「どうしたヨウジ?……こ、これは!」 ミライ「ユ、ユウキ兄さん!」 ヤライ「無事だったか!」 ユウキ「う、う〜ん……」 ヨウジ「気がついたぞ!」 ヤライ「しっかりしろユウキ! 傷は浅いぞ!」 ユウキ「うう……、ヤライ兄さん……」 ミライ「こんなにボロボロになって……。いったい下で何があったの?」 ユウキ「ポ、ポケモン……。大勢のポケモンに襲われて……」 ヤライ「ポケモンだと!? も、もしやこれが噂に名高き不思議のダンジョンだというのか!?」 ヨウジ「あ、あの、場所を選ばずどこにでも出現するっつー不思議のダンジョンか!?」 ユウキ「お、おそらく……」 ミライ「でも、そんな危険な場所からどうやって脱出したの!?」 ユウキ「バ、バネ……」 ミライ「え……?」 ユウキ「お、お守り袋に入れておいたバネの力を利用して……ジャンプを……」 ヤライ「――な、なるほど! さすがユウキ! 大事の前の小事だな!」 ミライ「バネの力って偉大だわ!」 ヨウジ「納得すんなよッ!!」 2008/03/02(日) ユウキ「す、すみません、気が動転して意味のわからないことを口走ったようです」 ヨウジ「意味がわからないってレベルじゃねーけどな。 ――で、本当はどうやって不思議のダンジョンから脱出したんだ?」 ユウキ「じつはポケモンたちに袋叩きにされたあと、そのまま叩き出されまして……」 ヤライ「うぅむ……。ではポケモンたちに襲われたってくだりは事実なのか」 ユウキ「はい。スタイラーで抵抗を試みたんですけど、 次から次へと沸いてくるので切りが無くて……」 ヤライ「それも不思議のダンジョンの特徴の1つらしいな」 ミライ「えぇと……。 つまり私たちが現在居る場所は不思議のダンジョンに挑むための拠点みたいなもの?」 ヤライ「そのようだな」 ヨウジ「――ったく……、なんだってそんな場所に閉じ込められちまったんだ。 ――ヤライ兄ィ。こんな穴、とっとと塞いじまおうぜ」 ヤライ「ああ、そうしよう。再び落下するリスクを背負い続ける必要もあるまい」 ユウキ「で、では僕も手伝――痛ッ!」 ミライ「ダ、ダメよ、ユウキ兄さん! ケガしてるんだから!」 ヤライ「そうだぞユウキ。ここは俺とヨウジに任せて、 向こうでミライの手当てを受けていろ」 ユウキ「す、すみません。みんなに迷惑をかけてしまって……」 ヨウジ「気にすんなって。ゴロゴロするのが好きなオレだって、 兄貴がケガしてるときぐらい働くぜ?」 ヤライ「ミライ。ユウキに肩を貸してやってくれ」 ミライ「ええ。――ユウキ兄さん、立てる?」 ユウキ「は、はい……。本当にすみません……」 ヤライ「――さてと……、俺たちはぬかどこを塞ぐか」 ヨウジ「おう。そんじゃ、さっそく板を打ち付けて――」 ヤライ「待て。普通に板を打ち付けるだけでは再び抜け落ちる可能性がある」 ヨウジ「た、たしかに……。じゃあ、どうする?」 ヤライ「簡単なことだ。俺がまずぬかどこを塞ぐ」 ヨウジ「で?」 ヤライ「おまえは内側から塞いでくれ」 ヨウジ「出られなくなるだろッ!!」 2008/03/05(水) ヤライ「ユウキが何事もなく体調を取り戻し、なによりだ」 ヨウジ「ああ。一時はどうなることかと思ったぜ」 ユウキ「みんなの献身的な看病のおかげです。本当に感謝していますよ」 ヤライ「いや、俺は大したことはしていない。 ユウキの面倒はほとんどミライが見ていてくれたからな」 ヨウジ「たしかにオレとヤライ兄ィは失敗ばかりでミライの足手まといだったな。 ミライが居なかったらユウキ兄ィのケガはもっと悪化してたかもしれねーぜ」 ヤライ「うむ。全部おまえのおかげだぞ、ミライ」 ミライ「ちょ、ちょっとヤダっ! みんなで持ち上げないでよ!」 ヤライ「うーむ……。素直になれないミライもなかなか……」 ユウキ「ですね」 ミライ「もぅ……。兄さんたちのいじわる……」 ヤライ「まぁ、何はともあれ本当に良かった。 今日はユウキの復活を祝して、少しばかりだが贅沢をしようじゃないか。どんどん食べるといい」 ヨウジ「おう! 遠慮はしねーからな。言っとくがオレは食うぜ?」 ユウキ「僕の分も残して置いてくださいね?」 ミライ「ざ・ん・ね・ん♪ こういうときの争奪戦は兄妹でも手を抜かないのが基本よ?」 ヤライ「ハハハ。こうしていると家族っていいものだなと、改めて思うな」 ユウキ「はい。僕たちは同じはらから(同胞)……。生まれた日は違えども死ぬときは一緒です」 ヤライ「もちろんだとも。 なんだか、数日前まで出番が無いことに腹をたてていた自分が、小さな人間に見えてきたぞ」 ミライ「たしかに出番は欲しいけど、なによりも家族が一緒っていうのが1番大事よね」 ヤライ「うむ。もう出番に固執するのはやめだ! ゲームには出れずとも俺たちには大切なものがある!」 ヨウジ「いいぞ! 兄貴ー!」 ユウキ「それでは改めて家族団らんの食事を―― あれ……? なにか音がしますよ?」 ヤライ「ん? ああ、メールが来たみたいだ。ちょっと待っていろ……。 ――ええと、なになに……。 「ポケモンだいすきクラブで3月21日からポケモンレンジャーバトナージのWebコミックがスタート……。 お、俺たちの出番抜きでポケモンレンジャーの漫画だと!? 絶対に許せんッ!!」 ヨウジ「メチャメチャ固執してるじゃねーかッ!!」 2008/03/06(木) ミライ「に、兄さん! お願いだから落ち着いて!」 ヤライ「ええい、止めてくれるな妹よ!」 ヨウジ「なんだなんだ?」 ユウキ「これは何の騒ぎですか?」 ミライ「ヨウジ兄さん、ユウキ兄さん、いいところに! ヤライ兄さんが机の引き出しの中に入るってきかなくて……」 ユウキ「はい? 引き出しの中ですか?」 ヤライ「放せミライ! 俺は21世紀へ帰らねばならんのだ!」 ヨウジ「おいおい、いったいどうしちまったんだよ、ヤライ兄ィ。 バトナージコミック化がそんなに嫌だったのか?」 ヤライ「そうではない! 俺は21世紀の未来人! おまえたちは現代人! 酢豚にパイルの実を入れるような邪道は正さねばならん! ゆえに果実は本来の居場所、樹木生い茂る南国へと帰らねばならないのだ!」 ヨウジ「――意味わかんねぇ……。重症だなこりゃ……」 ユウキ「なるほど……。どういった理由かは不明ですが、 兄さんは『自分はこの世界ではイレギュラーな存在であり、 急いで未来の世界へ帰らなければならない……』という妄想にとりつかれているようですね」 ヨウジ「今ので通じたのかよ!?」 ユウキ「勉強嫌いがアダとなりましたね、ヨウジ」 ヨウジ「いや、この場合、勉強嫌いとかそういう問題じゃ……」 ヤライ「こ、この縄をとけ! こんな真似をして、タイムパトロールが黙ってはいないぞ!」 ヨウジ「さてと。とりあえずヤライ兄ィを捕まえたワケだが、この先どうする?」 ユウキ「うーん……。今の兄さんはポケモンでいうところの「混乱」状態に近いようですね。 だとすれば混乱を引き起こす技を受けたと考えるのが普通でしょう」 ミライ「でも、この部屋にポケモンなんて居ないハズよね?」 ユウキ「そうなんですよ。台所の不思議のダンジョン入り口も調べましたが、 しっかりと板が打ち付けてあり、開けられた形跡はありませんでした」 ヨウジ「じゃあ、外から入ってきたってコトか?」 ユウキ「いえ、窓にもドアにもカギが掛けてありました。侵入など不可能です」 ミライ「え……、そ、それじゃあ、ポケモンの仕業って言うのには無理があるわよね?」 ユウキ「そういうことです。つまり消去法で考えて、ポケモンの技説は排除。 もう少し詳しい調査が必要ですね。とりあえずもう1度ぬかどこを調べてみましょう」 ◆ ヨウジ「とくに……変わったところはねェなぁ……」 ユウキ「うーん……。原因があるとしたらここだと思うんですけど――」 ミライ「ねぇ……。コレ、なにかしら?」 ユウキ「え?」 ミライ「ホラ、ぬかどこの周りに何か見慣れない粉が……」 ユウキ「たしかに……。なんでしょうね?」 ヨウジ「たぶん、料理に使った木の実の粉だろ。舐めてみりゃ分かるって」 ミライ「ちょ、ちょっとヨウジ兄さん!? そんな迂闊な――」 ヨウジ「う……!?」 ユウキ「ああ、お約束どおりの反応! 早く吐き出しなさい、ヨウジ!」 ヨウジ「ゲホッ、ゴホッ……。うう……。頭いてェ……」 ミライ「もう! ヨウジ兄さんは油断しすぎよ!」 ユウキ「まったくもって軽率ですね……」 ヨウジ「わ、わりぃ……、今のはオレの不注意だ」 ミライ「次からは気をつけてよね。 ――それはともかく、この粉はなんなのかしら?」 ヨウジ「なんか口に入れた瞬間、頭の中がかき回されたような感じになって変な気分だったぜ」 ユウキ「頭の中がかき回されたような感じ? ――もしかして!」 ミライ「ど、どこへ行くの、ユウキ兄さん?」 ヨウジ「なぁ。突然パソコンの電源なんか入れてどうしたんだよ?」 ユウキ「ちょっと静かにしていて下さい。 ――不思議のダンジョンについてのウィキは……と……。あった! ――なるほど……。そういうことですか……」 ミライ「いったいなんなの? わたしたちにも説明してよ」 ユウキ「あ、すみません。 じつは不思議のダンジョン内に落ちている食物のデータを調べてみたのですが その中に混乱を引き起こす木の実が存在するようです」 ヨウジ「……ってこたぁ、ヤライ兄ィはその木の実を食っちまったってコトか?」 ユウキ「はい。おそらくその可能性が高いでしょう。 木の実は『ふらふらの種』と呼ばれているらしく、 摂取すると、ポケモンから『超音波』などの技を受けたときと同じ症状が表れるようです」 ミライ「もしかして、ふらふらの種はぬかどこのダンジョンから?」 ユウキ「ええ。どうやら僕があのダンジョンから叩き出されたとき、 ポケットにでも紛れていたのでしょう」 ヨウジ「つまりさっきオレが舐めた粉は、ふらふらの種の粉末か」 ユウキ「でしょうね。しかし幸いなことに、しばらく放置しておけば効果は消失します。 放っておけば、じきに兄さんは正気を取り戻すでしょう」 ミライ「それなら安心ね。とりあえずヤライ兄さんが収まるまでここに――」 ヤライ「宇宙人・未来人・異世界人・超能力者がいたら俺のところへ来い! タダの人間になど興味は無い!」 ヨウジ「――なぁ……。本当に放置しといて大丈夫なのか?」 ユウキ「大丈夫ですってば。僕を信じてください」 ヨウジ「うーん……。ユウキ兄ィがそう言うんなら――」 ヤライ「おまえら、ちゅうもーく! 今からヨウジの秘密を発表するぞー!」 ヨウジ「やっぱり放っておけねェッ!!」 2008/03/09(日) |