バトナージ(その38)

ナツメ「さて。邪魔者が消えたところで本題に戻ろう。
    ――このスリーパー、どうする? 私ならば、指ひとつ触れずに絞め殺すことも可能だが」
ユウキ「捜査官にあるまじき発言ですね……」

ヤライ「……」
ナツメ「被害者はおまえ1人だ。ここは、おまえの意思を汲んでやろう。
    自分を死に至らしめようとした者の処罰は己が決めろ!」

ヤライ「……」
ユウキ「兄さん……」
ヨウジ「ヤライ兄ィ……」
ミライ「ヤライ兄さん……」

ヤライ「……ん……? ――ああ、すまん、よく聞こえなかった。もう一度言ってくれ」
ヨウジ「言えるかッ!」
ユウキ「なんで、ここ一番っていうときに耳を傾けていてくれないんですか!?」
ヤライ「だから謝っているだろう。
    すき家の豚トロ角煮丼を食べ損ねたことを思い出し、うわの空になっていたのだ」
ミライ「まだ気にしてたの……」
ヤライ「とにかく、すまなかった。――今一度頼む」
ナツメ「し、仕方がない……。これで最後だぞ……。

    ひ、被害者はおまえ1人だ(棒読み)。ここは、おまえの意思を汲んでやろう(棒読み)。
    自分を死に至らしめようとした者の処罰は己が決めろ(棒読み)」
ユウキ「兄さん(棒読み)」
ヨウジ「ヤライ兄ィ(棒読み)」
ミライ「ヤライ兄さん(棒読み)」

ヤライ「ああ、そのことか。
    ――そうだな……。
    人は誰しも間違いを犯す。スリーパーのような、孤独に苛まれている者を救うには、
    心から信頼できる家族を持つ、俺たちのような人間が、優しさを見せることが大切だ。
    だから今回は示談で済ませよう。
    スリーパーには、この件を反省材料に新しい人生を歩んでほしい。それが俺の願いだ」

ナツメ「……」
ユウキ「……」
ミライ「……」
ヨウジ「……こんな空気じゃ、感動もクソもねーよ」
2009/02/28(土)