バトナージ(その36)

ミライ「このドアの向こうに犯人が……」
ユウキ「緊張してきましたね」
ヤライ「だが、立ち止まってはいられない。
    こうしているあいだにも俺の体は蝕まれているのだ。――行くぞ」
ヨウジ「おう!」



ユウキ「失礼します」
ロングヘアーの女「来たか……」
ヤライ「――先ほど連絡を受けた、被害者のヤライだ。
    ――そこに居るスリーパーが犯人の……?」
ロングヘアーの女「ああ。念視でそいつの頭の中を覗き見た。間違いない」

ミライ「あれ……? あの髪の長い女の人――」
ヨウジ「ん? どした?」
ユウキ「どこかで見たような……、
    ――あっ! あの人、ナツメさんですよ! 超能力捜査官の!」
ヨウジ「へ? たまにテレビで見るアレか?」
ユウキ「ええ。人間でありながらエスパーポケモンの力を行使できるといわれる女性――
    超能力捜査官のナツメさんです!」
山本「さらに、彼女は、ここヤマブキシティのジムリーダーでもある。
   数年前、格闘道場の師範を不可思議な技を以って伏し、
   ジムリーダーの座を勝ち取ったそうだ」
ユウキ「つまりナツメさんは、エリカさんと肩を並べるほどの実力者。
    この短時間で犯人を捕らえることが出来たのも納得です」

ヤライ「……スリーパー……、いったいどうしてあのようなことを……」
スリーパー「……」
ナツメ「黙っていても私には分かるぞ。――派遣切り――だな?」
スリーパー「ツッ……!?」
ミライ「は、派遣切り……?」
ヤライ「そういえば聞いたことがある。
    ポケットモンスタープラチナの発売に際し、
    シンオウ地方のポケモンリーグチャンピオンがトリトドンをリストラしたという話しを」
山本「もしかして、このスリーパーも?」
ナツメ「ああ。似たような境遇らしい。つまりコイツは、トレーナーに捨てられたワケだ」
ミライ「そ、そんな……」
ナツメ「職を失い、食うに困っていたところを、
    偶然通りかかったおまえの、音楽家としての才能に目をつけたそうだ」
ヤライ「なるほど……」
山本「ヤライクンはバンドグループ、ゴーゴー4のリーダーだからね。
   ヤライクンの特性を奪って、音楽関係の仕事に在りつこうとしたんだろう」
ナツメ「そういうことだ。

    ――と、いうか――

    さっきから当然のカオして会話に参加してるオマエは何だッ!!」
山本「き、気づかれたかッ!!」
ヨウジ「そりゃ気づくだろ」
2009/02/15(日)