バトナージ(その31)

ユウキ「なるほど。そういうワケでしたか……。
    でも、緊急時だったんですから夜中とはいえ起こしてくれても構いませんでしたよ?」
ヤライ「もちろん試みたのだが、見ての通り、いらぬ手傷を負うことになってしまってな」
ユウキ「たしかに酷いケガですねぇ……。本当に何があったんです?」
ヤライ「いや。もういい。済んだことだ。
    それよりも今は目の前の問題に専念したい」
ユウキ「あ、はい! 兄さんの特性を奪っていったスリーパーの捜索――ですよね?」
ミライ「うん。それでユウキ兄さんにはパソコンで情報を集めてもらいたいんだけど……」
ユウキ「任せて下さい。
    必ずやスリーパーの居場所を突き止めて見せますよ」
ヨウジ「おーい。警察のほうには連絡入れといたぜェ」
ヤライ「うむ。ご苦労。――それで何と?」
ヨウジ「すぐにでも捜索を始めるらしいが、
    ヤライ兄ィに事情聴取するってんで、ポリ公が1人、こっちに来るらしいぜ」
ヤライ「そうか……。これでスムーズに解決と相成ればよいのだが――

    うッ……!?」
ミライ「ヤライ兄さん!?」
ヤライ「き、気にするな。少し目眩がしただけだ……」
ユウキ「いえ。気にしないワケにもいかないかもしれませんよ……」
ヤライ「うん?」
ヨウジ「どういうこった?」
ユウキ「以前、外国で、『人は睡眠を取らないとどうなってしまうのか』
    という実験が行われたのですが、その記録によると、被験者は幻聴や幻覚に見舞われ、
    脳に障害を残す形となってしまったらしいのです」
ミライ「え……」
ユウキ「被験者は、実験を終えて日常に戻ったあとも
    後遺症に苦しめられているらしいですよ」
ヤライ「な……。

    ――と、いうことは……、今の目眩は体が壊れる前兆……」
ユウキ「ええ。このまま不眠状態が続けば、兄さんの体は徐々に蝕まれ最終的に――」
ヨウジ「オ、オイオイ、あんま脅かすなよ、ユウキ兄ィ!」
ユウキ「あ、すみません! つい……。
    ――あ、安心して下さいね、兄さん!

    廃人になる前に、
    発狂して車道に飛び出し、そのまま事故死する可能性のほうが高いですから!」
ヨウジ「フォローになってねェ!!」
2009/01/09(金)