バトナージ(その29)

ヤライ「ううむ……。俺の特性……。――いったい、どういうものなのだろうか……」
ミライ「……そうだ! ――ねぇヤライ兄さん。何かいつもと違うところはない?」
ヤライ「違うところ?」
ミライ「うん! 兄さんにもともと備わってた特性がスリーパーに移ったっていうなら、
    それが体に変化を与えるハズじゃない?
    つまり、自分自身で、変わったなー、と思うところを探せばいいのよ」
ヨウジ「おっ! 考えたじゃねーか、ミライ」
ヤライ「変わったところ……か……。――ッ……! そういえば!」
ミライ「何か気がついた?」
ヤライ「うむ。おそらくこれだと思うのだが……」
ヨウジ「あん? なんだよ? ギターなんか持ち出して」

ヤライ「ん、コホン……。――野望のメロディ天高く!」
ミライ「え……? ちょ――、ヤライ兄さん!?」
ヨウジ「正気か、ヤライ兄ィ!? こんな真夜中にギターなんか鳴らしたら――」
ミライ「ユウキ兄さんが起きるだけじゃ済まないわよ!? 今度こそ近所の人に怒られて――」

ヤライ「いや……。どうやらその心配は無用らしい」
ミライ「え……?」
ヤライ「ギターの弾き方がわからん」
ヨウジ「な……!?」
ミライ「ど、どういうこと……?」
ヤライ「――スリーパーめ。とんでもないものを盗んでくれたな」
ヨウジ「だからどういうこったよ? 説明してくれ」
ヤライ「――ヨウジ。先ほど俺が、大合奏バンドブラザーズDXに興じていたとき、
    ミスを犯したのだが、覚えているか?」
ヨウジ「ん? ああ、アレだろ。歌詞の間違い……、サビの部分」
ヤライ「そうだ。――さらにその直後、俺は自分の腕が落ちていることに気づき、
    『今日はどうも調子が悪いな。リズムに乗れん』と呟いた。

    ――ここから導き出される答えは1つ――」

ミライ「あっ……!」
ヨウジ「ま、まさかヤライ兄ィ!」
ヤライ「そう――。俺がバンド活動を行う上で最も重要なもの――
    『音楽家』という名の特性をスキルスワップの力で奪われてしまったのだ!」

ミライ「そ、そんな……」
ヨウジ「マジかよ……」
ヤライ「俺とて信じたくはないが、この状況が事実であると示している。
    俺はスリーパーの技に惑わされ、重要な能力を盗まれたワケだ」

ヨウジ「だ、だったら、なんでそんなにノンビリしてんだよ!
ゴーゴー4の存続がかかってんだぞ! この一大事に――」
ヤライ「一大事だからこそ――。
    このような状況だからこそ、取り乱さないことが大切だとは思わないか?」
ヨウジ「う……」
ヤライ「幸いなことに敵の正体は判明している。
    ならばこそ、心を鎮め、冷静に対処するべきだろう」
ミライ「ヤライ兄さん……」
ヤライ「立ち止まっているヒマはない。俺たちの夢が朽ちるか否かの瀬戸際だ」
ヨウジ「お、おうっ!」

ヤライ「よし! やるぞ! 兄妹たち!

    ゴーゴー3に改名だ!」
ヨウジ「諦めんのかよッ!!」
2008/12/24(水)