バトナージ(その25) ヤライ「ぬ……。ここの難易度は記憶にあるより高めだな……」 ヨウジ「……なぁ、ユウキ兄ィ……」 ユウキ「なんです?」 ヨウジ「ヤライ兄ィのヤツ、なにやってんだ?」 ユウキ「どうやら、ポケモンレンジャー1作目を再プレイしているみたいですね」 ヨウジ「いやいや、そういうことじゃねーよ。なんで今、ゲームやってんのかって話しだ。 今日は、ヤライ兄ィがブッ壊して鍋の材料にしたオレのスタイラーを 修理に出しに行く約束だろ? 朝っぱらからゲームとか、おかしいだろーが」 ミライ「わたしもそう思って声をかけたんだけど、『あとにしろ』の一点張りなのよねー」 ユウキ「おそらく、兄さんは何か重要なイベントの情報を発見したのではないでしょうか」 ヨウジ「重要なイベント?」 ユウキ「ええ。――以前、ゴーゴー団解散後の父さんの動向を知ることができる イベントを見つけましたよね?」 ミライ「配信ミッション、『だいじなタマゴをとりもどせ!』のコト?」 ユウキ「そうです。――僕が考えるに、兄さんはそういったゴーゴー団に関する 重要な情報が得られるイベントの存在をどこかで知り、それを発見するため、 ポケモンレンジャーを初めからプレイしているのではないか、と……」 ヨウジ「そんなイベントあんのかぁ?」 ミライ「聞いたことないわよねー。 だいたいそんな重要なミッションがあるなら、わたしたちが知らないのはおかしくない?」 ユウキ「現に僕らは、 父さんが登場するミッションのことを最近まで知らなかったじゃないですか」 ミライ「そ、それは……、たしかにそうだけど……」 ユウキ「もし、新たなゴーゴー団に関するイベントを発見することができたのなら、 それはとても意義のあることですよ。僕らにとってもファンの皆さんにとっても」 ヨウジ「いや、まぁ、そいつァそうだろうけどよ……。 ファンのためを思うなら、まずはオレのスタイラーを修理すんのが先じゃね?」 ユウキ「気持ちは判りますがヨウジ、あそこまで真剣な表情でプレイしている兄さんに 水を差すのは好ましくありません。今日のところは家事全般を僕らでこなし、 兄さんにはイベント発見に集中してもらいましょう。 クリア後のミッションを含めても半日ほどで終わらせることが可能なゲームですし」 ヨウジ「チッ……。仕方ねェな……」 ◆ AM10:00 ミライ「ヨウジ兄さん、洗剤取ってくれる?」 ヨウジ「おう、これか?」 ミライ「そっちじゃなくて、部屋干しでも臭わないほう――」 AM11:45 ヨウジ「あー、ほんとに冷蔵庫ンなか空っぽだな。どうする、ユウキ兄ィ?」 ユウキ「カチャの実があるので煮つけにしましょう。みりんを用意して下さい」 PM4:55 ミライ「もうすぐ値引きシールが貼られる時間ね。覚悟はいい? ユウキ兄さん」 ユウキ「ええ。狙い目のおつとめ品はチェック済みです」 ◆ ヨウジ「あぁ、疲れた。――晩メシ間近だってのにヤライ兄ィのヤツ、動こうとしねーな」 ユウキ「ゲームを始めてから10時間……。再プレイならばクリアしてもいい頃ですね」 ミライ「ねぇ。本当にヤライ兄さんはイベント発見のためにプレイしてるの? ただ遊んでるだけってことは……」 ユウキ「しかし、キャプチャ・チャレンジやアリーナをやり込んだ兄さんが、 今さら意味もなくポケモンレンジャーを再プレイするというのは考えにくいことです」 ヨウジ「だけどよ、ネットでとっくに情報が出尽くしたゲームをやっても、 何かが見つかるとは思えねーんだよな。このあいだの配信ミッションの件は例外だろ」 ユウキ「う……。そう言われると僕も自信が……。 ――2人の言うことも判る気がします。やはり兄さんに直接訊いてみたほうが――」 ヤライ「出たッ! ついに出たぞッ!」 ユ・ヨ・ミ「ッ――!?」 ヤライ「やっと見つけた! この発見は再プレイしてでも確認するだけの価値があったぞ!」 ヨウジ「あ、あの喜びよう……」 ミライ「ま、まさか……」 ユウキ「――み、見つけたんですよ、兄さんは! 間違いありません! 隅々までゲームをやり尽くすことによって、 ゴーゴー団に関する貴重な情報を入手したんです!」 ヨウジ「マ、マジかよ……?」 ミライ「さっきから、発見したって騒いでるじゃない! この状況が何よりの証拠よ!」 ユウキ「そうです! その通りです! 騒ぎたてるほどの発見なんて、僕らに関するイベント以外に考えられません! ――兄さん! おめでとうございます! 今回の発見はゴーゴー4躍進のための大きな後押しとなるで――」 ヤライ「情報通りだった! 女主人公でプレイするとカイオーガミッションでのアリアとの会話が百合っぽく見える!」 ヨウジ「オレの10時間返せッ!!」 2008/11/15(土) |