バトナージ(その20)

ヤライ「……」

ヨウジ「なぁ。ギラティナをオリジンフォルムのままにしとくには、どうすりゃいいんだ?」
ユウキ「それなら、おくりの泉から再び破れた世界に入って白金玉というアイテムを――」
ミライ「あ! オーディオセット購入すると音楽が聴けるんだ! ラッキー!」

ヤライ「おまえたち……」
ユウキ「あれ? 兄さん、帰ってたんですか」
ヨウジ「んだよ。黙ってちゃ気づかねェだろ。
    そんなとこに突っ立ってねェでヤライ兄ィもプラチナやろうぜ」
ミライ「うんうん! 追加要素もたくさんあって楽しいわよ?」

ヤライ「ふぅ……。まったく嘆かわしいことだ」
ヨウジ「あん?」

ヤライ「いいか、よく聞け……。今のお前たちは完全に堕落し切っている!」
ユウキ「な、なんですか? 唐突に」
ミライ「わたしたちが……堕落……?」
ヤライ「その通り!
    前回、親父を倒すと決意を固めたにも関わらず、おまえたちの腑抜けヅラはなんだ!」
ユウキ「な、なんだと言われましても、ゲームをプレイしている間は頬も緩みますよ……」
ヤライ「愚か者め! そもそも、この状況でゲームをやっていられることが論外なのだ!」
ミライ「そ、そんな……。だって新作発売直後なのよ? 少しは時間をくれても――」
ヤライ「甘い! ――こんなときだからこそ!
    新作発売直後だからこそバンド活動に精を出し、他の者たちに差をつけるべきだろう!
    にも関わらず、おまえたちときたらポケモンスナック片手にプラチナに溺れる始末――。
    俺は心底情けない。だいたい、なんだこのコクランとカトレアとかいうブレーンは!
    セレブキャラは俺たちゴーゴー4兄妹の専売特許だぞ!」
ユウキ「思いっきり兄さんの私情が入ってるんですが……」
ヤライ「とにかく、このような生活を俺は認めん! 今から10分後に練習を始めるぞ!」
ミライ「えー! もう少しで別荘の家具が揃うのに――」
ヤライ「反論は許さん! やると言ったらやるのだ! 各自、楽器の点検をしておけ!」

ヨウジ「チッ……。んとにカタブツだよなぁ、ヤライ兄ィは」
ユウキ「父さんに大見得を切ってしまったから躍起になっているんでしょうね」
ミライ「あーあ。ミライ、もっと遊びたかったなー」
ユウキ「まぁ、しばらくゲーム三昧の日々でしたから今日くらい真面目に練習しましょう」
ヨウジ「仕方ねェな……。――……おーい、ヤライ兄ィ。準備できたぜぇ」

ヤライ「ま、待て! 高個体値のメタモンが出たから2時間後に変更だ!」
ヨウジ「ヤライ兄ィが1番ハマってんじゃねーか!!」
2008/09/17(水)

ヤライ「さて、このままプラチナをプレイし続けてもゴーゴー4の活動に支障が出るので、
    そろそろ真面目な議論をしようではないか」
ヨウジ「金シンボル4つ集めたあとに言っても説得力ねーよ」
ユウキ「バトルファクトリーの金シンボルだけ取れなかったんですね」
ミライ「ヤライ兄さん、色々な意味でカワイソウ……」
ヤライ「ええい、そんな目で見るな!
    ――ファクトリーヘッドのヤツ、何が、『ワーオ! ぶんせきどーり!』だ!
    攻撃が3回連続で急所に当たるのも分析通りか? 冗談じゃない! だいたい――」
ユウキ「プラチナの話しは長くなるのでやめましょう。それより今日の議題は何ですか?」
ヤライ「う、うむ。今回は俺たちの活動に一風変わった芸風を取り入れてみたいと思う」
ユウキ「?……。話しがよく見えないのですが……」
ヤライ「つまりだな、万人受けするネタも大切だが、
    今回は客の目を引く奇をてらった演出してみようということだ」
ヨウジ「ちょ、ちょっと待ってくれ。1つ聞いていいか?」
ヤライ「なんだ? ヨウジ」
ヨウジ「さっきから芸風とかネタとか、まるでお笑い芸人みたいな話しになってねーか?」

ヤライ「……さて……、ここで俺は1つの案を思い付いたわけだが――」
ヨウジ「てめェ、聞こえてただろーが! 無視すんなよ!
    つーか、お笑い番組に出演した時の盛り上がりが忘れらんねーんだろ!? 絶対そうだろ!?」
ヤライ「黙っていろ、ヨウジ。こんな時間に騒いだら、ご近所の皆さんに怒られてしまう」
ヨウジ「こ、こんなときだけ正論で切り抜けやがって。汚ねェな……」
ユウキ「――で、兄さんの言う一風変わった芸風とは何なんですか?」
ヤライ「うむ。今から俺が手本を見せよう。――コホンッ……。

『我ら4兄妹こそ、ゴーゴー団のすべてを取り仕切る幹部なのです』」

ミライ「――そ、その喋り方は……」
ユウキ「ポケモンだいすきクラブで見られるレンジャーコミック版のヤライ兄さんですね!?」
ヤライ「その通り! ゲーム版にはない話し方で注目度上昇!
    俺たちの普段とは違う喋り方がギャップを感じさせ、
    ファンの目にはそれが魅力的に映るというわけだ!」
ユウキ「な、なるほど!
    9月25日のポケモンアニメで、タケシさんが普段のナンパキャラとは違う、
    頼れるブリーダーとしての顔を見せて株を上げましたが、
    それと同じ効果が得られるというわけですね!?」
ヤライ「うむ! 飲み込みが早いな、ユウキ。
    この方法を使えばゴーゴー4のファンを驚かせつつ、新規ファンの獲得も見込めるだろう」
ミライ「すごい! すごいわ、ヤライ兄さん! 画期的じゃない!」
ヤライ「フッフッフ。そんなに褒めてくれるな、妹よ。照れるではないか」
ユウキ「いやぁ、本当に斬新ですよ! これはいけるかもしれませんね」
ミライ「ねぇ、ねぇ わたしもやってみていい?」
ヤライ「もちろんだとも。おまえたちがやる気になってくれて嬉しいぞ」
ミライ「じゃあさっそく……。――コホンッ……。

    『お伝えするまでもなく、わかってらっしゃると思うのですけど、
    今日で間違いございませんわね!?』」

ヨウジ「そ、そいつァ……」
ユウキ「レンジャーコミックに登場した、
    レンジャーさんを足止めするために変装していたときの喋り方ですね!?」
ミライ「正解! 作戦のために変装してたんだけど、けっこう気に入ってるのよね〜」
ユウキ「漫画とか小説のお嬢様学校で使われてそうな口調ですね。
    ファンの皆さんにも楽しんでもらえそうです」
ヤライ「ミライっ!!」
ヨウジ「うおっ!? い、いきなり大声出すなよ、ヤライ兄ィ!」
ミライ「ど、どうしたの? ヤライ兄さん」

ヤライ「あ、明日の朝は、その口調で俺を起こしてくれ!
    もちろん俺を呼ぶときは、『ヤライお兄さま』だ!
    両手は腰に当てて、目線は見下ろす感じでだぞ!
    判ったか? 絶対忘れるなよ! 楽しみにしてるからな!
    それじゃあ俺は寝る! おやすみ!」
ヨウジ「ヤライ兄ィが楽しんでどうすんだよッ!!」
2008/09/27(土)