バトナージ(その18)

ヤライ「さて。いったい親父がどのようにして生活費を稼いでいるのか、それが問題だ」
ヨウジ「だから、どっかからパクってんじゃねーの?」
ミライ「やめてよ! そういうこと言うの!」
ユウキ「しかしですね、ミライ。僕らの父さんは――と、いまチャイムがなりましたよね?」
ヤライ「ん? ああ、誰か来たようだな」
ミライ「ユウキ兄さんよろしくー」
ユウキ「みんな、当然の顔して僕に振りますよね。今に始まったことじゃないですけど」



ユウキ「よいしょ……っと……」
ヤライ「親父からか?」
ユウキ「ええ。そうみたいです。今日はかなり重量がありますよ」
ヤライ「さっそく開けてみるか。――ヨウジ。カッターを取ってくれ」
ヨウジ「なんつーか、こんな話ししてるときに大量の仕送りされても素直に喜べねェな」
ミライ「だからやめてって言ってるでしょ! なんでヨウジ兄さんはそうやって――」
ヤライ「落ち着けミライ。――ヨウジも軽口はそこまでにしておけ」
ヨウジ「へいへい、1番お偉いヤライ兄ィの言う通りにしますよっと」
ヤライ「口の減らない弟め……。
    そういった態度を続けていると、今に自分自身を滅ぼすことに――」
ユウキ「おや? これは……」
ミライ「どうしたの、ユウキ兄さん? バネでも入ってた?」
ヤライ「そんな物が入っていたら、ユウキはすでに地球を2周くらいしているハズだ。
    嬉しさのあまりな」
ユウキ「いえ、さすがの僕でもそこまでは……。せいぜい半周が関の山――」
ヨウジ「んなことより何が入ってたんだよ? 親父が盗んだ食いモンか?」
ミライ「ヨウジ兄さんっ! それ以上言ったら本気で――」

ヤライ「CD……だと……?」
ミライ「え?」
ユウキ「本も入ってますよ。やたら分厚い本が」
ヨウジ「本とCD? こちとら食うにも困ってるっつーのに、何だってそんなモン――」
ヤライ「シッ! ――ちょと待てよ……。このCD……、作曲者が親父だ!」
ミライ「えぇえっ!?」
ユウキ「こ、こっちの本にはラゴウ伝って書いてあります!
    よく見たらコレ、父さんの自伝ですよ!」
ヨウジ「な……。も、もしかして親父のヤツ、CDと本を出してたってことか!?」
ヤライ「そ、そうと考えて間違いないだろう。しかも、見たところすべて会社媒体だ」
ミライ「す、すごい……。こんなにたくさん……」
ヨウジ「親父のヤツ、オレたちの知らないところで作曲と執筆を……」
ユウキ「リリースはどれも一昔前……」
ヤライ「――と、言うことは……」

ヨウジ「夢の印税生活かよッ!!」
2008/08/27(水)

???『ふはははは! 驚いたか! 我が息子たちよ!』
ヤライ「誰だッ!?」
ユウキ「え……? もしかして……」
ミライ「ッ……!? こ、この声は父さんのッ!?」
ヨウジ「な、なんだなんだ!? いったいどっから――」

???『どこを見ておる! ここだ、ここ!』
ヨウジ「うおわっ!?」
ミライ「と、父さんッ!?」
ヤライ「ダ、ダンボールの中から親父がッ!?」
ユウキ「いえッ! よく見て下さい! これは父さんの立体映像です!」
ヤライ「ま、まさかダンボールの底に装置が仕込まれていたというのか!?」
ラゴウ『そのとおりよ! この程度の仕掛けにも気づかぬとは、まだまだ青いな!』
ヤライ「ぐゥ……。し、しかし、いつの間に……」
ラゴウ『やれやれ。その答えすら己で導き出せぬとは……。
    ――おまえたちの元に荷物を届けていたのは誰だ? 元ゴーゴー団員であろう』
ユウキ「そういえば……! うっかりしていました!
    紙吹雪さんじゃないですか! いつも仕送りを運んできてくれていたのは!」
ヨウジ「そ、そういやそうだった!
    前回も来てたけど、そのシーンだけスッ飛ばされてたから、あいつのこと忘れてたぜ!」
ヤライ「そんなことはどうでもいい! それよりもだ。
    親父、あんたには聞かなければならないことが――」
ミライ「父さん!!」
ラゴウ『ぬ……。ミライ……?』

ミライ「どうして……。どうして何も言わずにわたしたちから離れていったの!?」
ラゴウ『し、仕方あるまい。事前にタネ明かしをしてしまえば修行にならんだろう……』

ユウキ「しかし、今回の件はあまりにも唐突すぎだと――」
ラゴウ『笑止! 我が息子がこれしきのことで右往左往するなどあってはならんのだ!』

ミライ「で、でも、いきなり知らない土地に飛ばすなんて……」
ラゴウ『き、気持ちはわからんでもないが、これもおまえたちのためだったのだ……』

ヨウジ「んなことよりデケェ問題があんだろーが。あんだよこの親父の本とCDは。
    オレたちは親父をビビらせようと、ずっとこのヤマブキで仕事探してたんだぜ」
ラゴウ『フン。それも私からすれば盤上のゲームだったということ。
    おまえたちは何一つとして私を超えることなど出来ておらんのだ!』

ミライ「そ、そんな……。父さんに認められたくて頑張ってきたのに……。う……」
ラゴウ『あ! す、すまんミライ! 少し言い過ぎた! お、落ち着きなさい!』

ヤライ「自身が優越感に浸るため、俺たちを弄んだのか?」
ラゴウ『愚かな! 獅子は我が子を千尋の谷に突き落とすもの!
    ゆえにおまえたちに絶望を味あわせることが至上の訓練方法なのだ!』

ミライ「ひ、ひどいよ……。えぐっ……。
    父さ――パパに会えなくて、わたし……。うう……。ずっとさみしかったんだからぁ……」
ラゴウ『おおぉ、よしよし! パパが悪かった!
    お小遣いあげるし、寝る前にご本も読んであげるから泣かないでおくれ!』
ヨウジ「ミライにだけ態度変えすぎだろッ!!」
2008/09/03(水)