バトナージ(その13)

ユウキ「いやー! 今年の映画も面白かったですねー!」
ヤライ「うむ。やはり悪役の存在は物語の緊張感を底上げしてくれるな」
ヨウジ「ちょっと前まで不貞腐れてたクセに、やけにゴキゲンだな、ヤライ兄ィ」
ヤライ「ま、まぁな。――映画を観ていたら心のわだかまりが取れたというか……。
    とにかく、小さなことにこだわっていた自分がバカみたいに思えてきてな。
    これから4人で作品を作り上げていこうというときにケンカばかりしていられん。
    俺は自分のプロットに固執しすぎていたのかもしれないな。すまなかった」
ミライ「気にしなくていいわよ。ヤライ兄さん!
    それより、さっき受け取ったシェイミがミクルの実っていうのを持ってたんだけど、
    これって朝比奈――」
???「お〜い! ミライちゃ〜ん!」
ミライ「ッ……!? ――こ、この声は、もしかして……」

ミニスカ「こんなところでミライちゃんに会えるなんて、あたしってばツイてるぅ!」
ミライ「ひぃぃッ! やっぱりあのコだわ!」
ヤライ「あれは……、たしかタマムシジムの……」
ユウキ「エリカさんのお弟子さんたちのようですね」
ヨウジ「あいつらも映画に来てたのか」

ミニスカ「ミライちゃぁん!」
ミライ「きゃあぁぁっ!」
エリトレ♀「ちょっとアコ! 街中で人に飛びつくもんじゃないわよ!」
ミニスカ「このあいだは、さよならも言わずに帰っちゃうんだからぁ。
     あたし、さびしかったんだよぉ?」
ミライ「あ、あれにはちょっと事情があって――。ふぁっ! だ、だから耳は――」

エリトレ♀「まったく……。ごめんなさいね。あのコ、いつもああなのよ」
ユウキ「いえいえ。気にしないで下さい。妹も喜んでいますし」
ヨウジ「そうは見えねェぞ……」
ヤライ「おまえたちもシェイミの映画を?」
エリトレ♀「ええ。あのコがどうしても、っていうから仕方なくね。
      本当はポケモンバトルの特訓をする予定だったんだけど……」

ミニスカ「ミライちゃんってば相変わらずギガンテックカワユス〜。
     ――ねぇねぇ! あたし、あれからまた新しいお洋服を作ったんだけど、着てみたい?
     ミライちゃんに、とぉっても似合うと思うの! 着てみたいよね?
     うん! そうだよね! やっぱり着てみたいよね! わかった!」
ミライ「まだ何も言ってないでしょ!」

エリトレ♀「あのコには困ったものよ。頭の中は遊ぶことばっかり」
ヤライ「まぁ、そういうな。特訓の息抜きに街へ繰り出すというのも良いものだぞ」
ユウキ「そうですね。
    高みを目指すため、日々、努力を積み重ねるということは大切です。
    ですが、肩肘を張ってばかりというのも考え物ですよ」
ヤライ「ようは仕事と遊びのバランスだな。
    こういう場所に足を運び、ストレスを発散するというのも大事なことだ。
    ――ま、度が過ぎるとヨウジみたいになってしまうがな」
ヨウジ「ひとこと余計だ」
エリトレ♀「フフフ……。何だかあなたたちを見ていると、心が弾んでくるわね」
ユウキ「そう言ってもらえると光栄です。
    人々に夢と希望を与えるのが、僕らゴーゴー4の目的ですから」
ヤライ「ヨウジは、それプラス金な」
ヨウジ「だから、ひとこと多いっつーの!」

エリトレ♀「フフ……。
      たしかに私は、リーダーを陰から支えられるよう、必死で特訓を重ねてきたけど、
      なかなかリーダーは私を褒めてくれなかった。
      それはもしかしたら、自身の健康管理を怠っていた私への警告だったのかもしれないわね」
ヤライ「うむ。エリカ嬢は心優しい人物だ。
    部下であるおまえに気を使うのは当然と言えよう」
エリトレ♀「そ、そうかしら……?
      何だか元気が出てきたわ。私もあのコを見習って、もう少しハメを外してみる」
ユウキ「それがいいですよ。そうすればきっと、リラックスして特訓に望めます」
エリトレ♀「ありがとう。――でも、具体的には何をすればいいのかしら?
      今までポケモンバトルのことばかり考えて生活していたから、遊びには疎くて……」
ヤライ「さしあたっては、エリカ嬢とプライベートな会話をしてみるのが良いだろう」
エリトレ♀「リーダーと?」
ヤライ「ああ。勤務時間外を利用し、上司との友好を深める。重要なことだ」
エリトレ♀「そう……。でも、何を話したらいいのか……」
ヤライ「ううむ……。そうだな……。――こういうのはどうだろう。

    エリカ嬢の背後からコッソリと近づき、
    『エリカたんギザカワユス〜!』と言いながら抱きつく」
ヨウジ「ダメに決まってんだろ!!」
2008/07/23(水)