バトナージ(その12)

ユウキ「そして、この部分はメインキャラクターの存在感を出すために、
    脇役の描写は抑える方向で――」
ヨウジ「するってーと、こっちは――」
ミライ「なかなか纏まって来たわね。ヤライ兄さんもそう思わない?」

ヤライ「……」

ヨウジ「いつまでムクれてんだよヤライ兄ィ」
ユウキ「そうですよ兄さん。よりよい本を作るため、兄妹が一丸となって努力する――。
    素晴らしいことだとは思いませんか?」

ヤライ「……どうせ……俺のプロットは穴だらけさ……」
ミライ「もう誰もそのことを責めたりしてないじゃない。
    私たちはただ、細かい部分を改変して作品の完成度を高めていこうって言ってるのよ?」
ヤライ「改変……? 改悪の間違いじゃないのか?」
ユウキ「あのですねぇ兄さん。そうやって意固地になってると――」
ヨウジ「もうほっとけよ、そんなヤツ。それより一旦休憩してテレビでも観ようぜ。
    数時間ぶっ続けでプロット考えてたから、さすがに疲れたぜ」
ユウキ「それがいいですね。時間を置けば兄さんも納得するでしょうし」
ミライ「今の時間なら、ちょうど、世界○見えが始まるところよ」
ユウキ「ナイスタイミングですね。――それでは……、ポチッとな」

テレビ「世界○見え!テレビ特捜部ー!」

ミライ「月曜日になると真っ先にこの番組が頭に浮かぶわね」
ユウキ「ええ。歴史のある番組ですから」
ミライ「あ! タケシ!」
ユウキ「今日はダークライの着ぐるみですね」
ヨウジ「タケシ岩タイプ使え!」

テレビ「今回ご紹介するポケモンが生息しているのは、おとなり韓国」
ミライ「出た! 唐突すぎる韓国料理の紹介!」
ユウキ「たしかに、あまりにも唐突な感が否めませんよね」
ヨウジ「でも旨そうだなぁ……」

テレビ「ここで問題。ホエルコが晴れた日に砂浜に上がるのは何のため?
    次の4つの選択肢から選んでいただきたい」
ヨウジ「こういうクイズのシーンでスーパーマリオのBGMが流れるのは何でだ?」
ユウキ「任天堂がこの番組のスポンサーだからですよ」
ミライ「へぇ〜。豆知識ね」

テレビ「ないない! これは大きすぎる!」
ヨウジ「こいつが等身大ホエルコの模型か。たしかにデカすぎだな」
ミライ「ウツギさんも大きすぎるって言ってるしね」
ユウキ「でも実際にこのくらいあるらしいですよ」
ヨウジ「マジかよ……。コイツを飼い慣らすのは難しそうだぜ」
ミライ「あ。ウツギさんがまた、ピコピコハンマーでタケシに叩かれてる」
ユウキ「体を張った芸風――。本当に努力家ですよね。ウツギさんは」
ヤライ「おい」
ヨウジ「うおォッ!? びっくりした!
    なんだよヤライ兄ィ! いきなり後ろから話しかけんな!」
ヤライ「すまん……。ちょっとおまえたちに話しがあってな」
ユウキ「ようやくプロットの再構成に協力してくれる気になったんですか?」
ヤライ「いや。そうではない」
ミライ「まだ認めてくれないの? 気持ちは判るけどこだわりすぎじゃない?」
ヨウジ「ホント、めんどくせェ兄貴だよなぁ……」
ヤライ「本当にすまない。だが、一言だけ言わせてほしいんだ」
ヨウジ「わかった、わかった。とっとと言っちまえよ。聞いてやっから」
ヤライ「感謝する。――実はな――」
ミライ「実は?」

ヤライ「俺のプロットで人間界を襲撃する魔物たち――。全員が仕掛け人なんだ」
ヨウジ「ここでネタばらしか!!」
2008/07/15(火)