バトナージ(その11) 英知を極め、平和の代名詞とも呼ばれている王国、カントー。 だが、長い年月をかけて培ってきた平穏は突如として崩れ去る。 魔界より現れし魔物たちがカントー王国の街々を襲い始めたのだ。 中でも魔王に仕える四天王、氷帝カンナ、闘神シバ、死霊使いキクコ、 竜騎士ワタルの力は凄まじく、カントー王国の兵たちは次々と倒されていった。 ――もはや成す術なし……。 誰もが諦めかけた刹那、勇気ある4人の若者たちが魔王討伐に名乗りを上げた! 勇者ヤライ! 僧侶ユウキ! 戦士ヨウジ! 魔導師ミライ! 彼らこそ伝説の勇者、ラゴウの血を引く者たちだったのだ! ◆ ヤライ「――どうだ? 俺が考えた物語のプロットは」 ヨウジ「……うーん……。なんつーか……、ありきたりだよな」 ヤライ「何……?」 ユウキ「これでは既存の作品の焼き直しですね。お世辞にも質が良いとは言えません」 ヤライ「おまえたち。俺の作品が気に入らないと?」 ユウキ「いえ。だってこれは酷いですよ。 使い古されて、とっくに化石と化した設定のオンパレードじゃないですか」 ヤライ「ユウキ。おまえ、いつから俺に意見できるほど偉くなった」 2008/07/05(土) ミライ「そんなにカリカリしないでよ、ヤライ兄さん。 ユウキ兄さんの言うことも、もっともだと思うわよ?」 ヤライ「ミライ。おまえまで俺のプロットにダメだしをするのか?」 ユウキ「ダメなところがあるなら努力して改善していけばいいじゃないですか。 ほら。僕たちも手伝いますから一緒に作り直しましょう」 ヤライ「黙れ! たしかにこの設定は使い古されて新鮮味のカケラも無いのかもしれない。 だが、そういった設定だからこそ、それが懐かしさとなり多くの者たちが心惹かれるのだ!」 ユウキ「いつも前向きな兄さんがノスタルジーに浸るなんて、らしくありませんよ?」 ヨウジ「まったくだぜ。 だいたいこの設定、ヤライ兄ィが勇者とか、兄貴風ふかしてやりたい放題じゃねェか」 ヤライ「な、何を言うか! 俺は各々の役割を真面目に考え、 もっとも似合うであろう職業をおまえたちに当てはめたのだ。 1番体格のいいヨウジが、勇者ではなく戦士職に就くのは当然の流れだろう!」 ヨウジ「ケッ! それが自分を勇者にした言い訳かよ? もっとマシなの考えろや」 ヤライ「な……。ヨウジ……。おまえェ……」 2008/07/05(土) ヨウジ「だいたい、前からヤライ兄ィばっか、ひいきされてたじゃねェか。 レンジャーユニオンの連中と戦ったときだって、 ヤライ兄ィだけ専用BGMが用意されてたしよ。オレら3人は共通だったってのに」 ユウキ「あー、たしかにそうでしたね」 ミライ「ヤライ兄さんばかり優遇されてる感じはするわよねー」 ヤライ「その代わりおまえたちは全員、レンジャーたちと2回の戦闘が可能だっただろう! 俺はゴーゴー団アジトでの1回きりだった! 変な言いがかりはやめろ!」 ユウキ「1回きりなら、なおさら専用BGMなんて必要ないじゃないですか。 最後のボスならともかく」 ヤライ「ああ、もう話しにならん! 俺の前座ごときに専用BGMが必要かどうかなんて、少し考えれば判ることだろう!」 ミライ「あ! いま『前座』って言った!」 ユウキ「ついに本音が出ましたね! 兄さんは今まで僕たちのことを大切に思うフリをして、 心の中では所詮引き立て役と見下していたんでしょう!」 ヨウジ「ふざけたヤロウだ!」 ヤライ「だまれ、だまれ、この特別扱いに飢えたカビゴンども! そんなに専用BGMが欲しいのならくれてやる! ――たしかこの箱に……。――あった! ――ホラ! 持っていけ!」 ヨウジ「あん……? CD……?」 ヤライ「『タケシのパラダイス』『ポケモン音頭』『前向きロケット団』。好きなのを選べ!」 ヨウジ「選曲おかしいだろ!!」 2008/07/05(土) |