バトナージ(その8)

ユウキ「いやぁ〜。昨日はヨウジのおかげで予想以上の成果を上げることができましたね!」
ヤライ「うむ! ヨウジが小太鼓を所持していることにツッコミを入れる俺たち――。
    そのシュールな芸風がじつに面白いと、プロデューサーも褒めてくれたしな」
ヨウジ「別に笑いを取ろうとしたワケじゃねェけどな」
ミライ「それでも今回の成功はヨウジ兄さんの力があってこそよ。本当に感謝してるわ」
ヨウジ「そ、そんなに褒めんなよ。照れるだろ……」
ヤライ「ハハハ!
    とにかく今日はテレビ出演の成功を祝し、兄妹みずいらずで過ごそうじゃないか!」
ミライ「うん! ――あ、そうだ! 父さんから送られてきたゲームやらない?
    このあいだ、紙吹雪の人が届けてくれたのよ」
ユウキ「いいですね。この箱ですか? ――よいしょっ……と……」
2008/06/11(水)
ヨウジ「――こいつァ……。昔のゲーム機か?」
ユウキ「どうやらファミコンのようですね。黒いソフトが一緒に入っています」
ヤライ「おお! これは……!」
ミライ「ヤライ兄さん。知ってるの?」
ヤライ「知ってるも何も、これは俺たちの大先輩だぞ?」
ヨウジ「だ、大先輩……?」
ヤライ「うむ。説明しよう。このゲームソフトの名は『クインティ』。
    ポケモンの生みの親である田尻智氏が創設したゲームフリークの処女作だ!
    パネルをめくることにより、そのパネル上に居る敵を弾き飛ばし、
    壁にぶつけて倒すという斬新なルール――。
    それに加え、簡単な操作で収集、対戦、駆け引きなどが楽しめる、
    まさにアクションゲームの傑作なのだ!」
ユウキ「つ、つまり、クインティは僕たちにとって、血を分けた兄弟も同然なんですね?」
ヤライ「そのとおり! このゲームは俺たちの先輩であると同時に、姉でもあるのだ!」
ミライ「姉……? 兄じゃなくて?」
ヤライ「ああ。このゲームのタイトルであるクインティ。これは主人公の妹の名前なのだ」
ヨウジ「え? ちょっと待ってくれ。主人公より妹のほうが優遇されてんのか?」
ヤライ「ラスボスだからな。妹は」
ユウキ「い、妹がラスボスですか……。驚きました」
ヤライ「俺も初めて知ったときは驚いたさ。このゲームが発売されたのは1989年。
    その頃から田尻氏の発想力は、システムだけでなくストーリーにも色濃く表れている。
2008/06/11(水)
    ――ゲームの舞台は不思議な人形の国――。
    そこで主人公の少年カートンは、妹のクインティと3人の兄たちと仲良く暮らしていた。
    だが、カートンにジェニーという恋人ができたことから事態は一変する。
    ジェニーとばかり仲良くするカートンの姿を見た兄妹たちは激しく嫉妬。
    こともあろうにジェニーを誘拐してしまったのだ!」
ミライ「ええ!? それだけの理由で犯罪に走ったの!?」
ユウキ「壮絶ですね……」
ヤライ「クインティたちにさらわれた恋人のジェニーを救うため、
    主人公カートンは友人のパートンと共に旅立つのであった!」
ヨウジ「パートン無関係だろ」
ユウキ「とばっちりですね」
ヤライ「さぁ! カートンたちの行く手に待ち受けるものはいったい何なのか!?
    次回を刮目せよ!」
ミライ「か、紙芝居屋さんみたいね……」
ヨウジ「ノリノリだな」

ヤライ「そんなワケで、田尻智とは非常に独創的な感性を備えた人物なのだ」
ユウキ「勉強になりました……。さすが僕たちの生みの親ですね」
ヨウジ「オレたちの親父の、さらに親父ってワケだな。1度会ってみたいモンだぜ」
ヤライ「うむ。現在はゲーム開発の現場から1歩引いた状態であるらしいが、
    彼の意志を受け継いだスタッフたちがポケモンを作り続けている。
    そのおかげで田尻氏も、安心して代表取締役としてのインタビューに専念できるのだろう」
ミライ「私たちが将来スターになって、田尻さんとお話しする機会ができたら、
    インタビューとかして色々なことを聞きたいわよね!」
ヤライ「そうだな。ぜひ、田尻氏に聞いてみたいものだ。

    クインティがエロい格好をしている理由について」
ヨウジ「答えにくいだろッ!!」
2008/06/11(水)