バトナージ(その2)

ヤライ「さてと。今日も張り切ってバンド活動と行きたいところだが――」
ようじょ「まってました〜! ぱちぱちぱち〜!」
ヨウジ「今日は1人か。前回より少ねェぞ……」
ユウキ「ファンの方たちにも成すべきことがあるのでしょうけど、
    さすがに観客が1人というのは厳しいですね」
ミライ「そうね。でもせっかく来てくれてるんだし――」
ようじょ「どおしたの? きょうはおうた、うたわないの?」
ユウキ「い、いえ! そんなわけないじゃないですか!
    せっかくあなたが来てくれたんです。最高のライブをお届けしますよ」
ようじょ「うれしいなー。ユウキおにいちゃんにかんげいされちゃった!」
ヤライ「ん……!? ――まてよ……。いいことを思いついたぞ!」
ミライ「い、いいこと……?」
ヤライ「ああ。観客を一度に増やす画期的な方法だ」
ヨウジ「な、なんだと!――って、
    このテのやりとりはヤライ兄ィがオレを怒らせるパターンじゃ……」
ヤライ「まぁ、そういうな。今回の作戦は完璧なんだ。俺について来い」
ヨウジ「ふ、不安だ……」

ヤライ「ちょっといいか? お嬢ちゃん」
ようじょ「ん? なぁに?」
ヤライ「お嬢ちゃんは、こっちのユウキお兄ちゃんのことが好きなんだろう?」
ようじょ「うん! だぁーいすき!」
ユウキ「ちょ、ちょっと兄さん!? なんなんですか、いったい?」
ヤライ「いいからそこに居ろ。これはファン獲得に繋がる重要な作戦なんだ」
ユウキ「は、はぁ……」
2008/04/08(火)
ヤライ「だったらさ。俺たちのバンドの宣伝をしてきてくれないかな?」
ようじょ「せんでん……?」
ヤライ「そう。見ての通り、俺たちのライブはお客さんが少ない。
このままだと俺たちは食べ物が買えなくて飢え死にしてしまうんだ。もちろんユウキお兄ちゃんも」
ようじょ「ええ!? そ、そんなのやだよぉ!」
ヤライ「だろう? だからきみには俺たちのバンドの宣伝をしてきてほしいんだ。
タダとは言わない。きみのおかげでファンが増えた暁には、ユウキお兄ちゃんを好きにしていいよ」
ようじょ「ほ、ほんとう!? ユウキおにいちゃん、デートとかしてくれる!?」
ヤライ「ああ。もちろんだとも」
ユウキ「に、兄さん!? そんな勝手な――」
ヤライ「ユウキ! ここが重要なんだ。ここで努力せずして道は開けない。違うか?」
ユウキ「し、しかしですね……」
ヤライ「これ以上、親のスネをかじるのは嫌だろう? 自立するんじゃなかったのか?」
ユウキ「うう……」
2008/04/08(火)
ようじょ「どおしたの?」
ヤライ「いやいや、なんでもない。それで……引き受けてくれるよな?」
ようじょ「う、うん! ユウキおにいちゃんのためだもん! ミノリ、がんばるね!」
ユウキ「あ! ちょっと、まっ……。ああ……。行っちゃった……」
ヤライ「諦めろ、ユウキ。これも1つの結果だ」
ミライ「ヤ、ヤライ兄さん! いくらなんでも、あんな小さな子を騙すのは……」
ヤライ「騙す? なんのことだ?
    俺はただ、『ゴーゴー4の人気が出なければ俺たちは飢え死に』という事実を述べただけだぞ?」
ミライ「だけど――」
ヤライ「今さら他人を利用することに傷心とはな、ミライ。
俺たちがフィオレでおこなった数々の所業、忘れたわけではあるまい?」
ユウキ「に、兄さん! そんな言い方は――」
ヤライ「今さら手を洗ったところで汚れは落ちんさ。いい加減に理解したらどうだ?
    この世は、利用される者と、利用する者――。2種類の人間が居るというコトを」
ヨウジ「そうだ、そうだ! 今さら手段なんか選んじゃいられねェ。
    オレたちゃあ、明日がかかってんだ。食いモンがなきゃ死ぬ。こいつァ自然の摂理ってモンよ」
ミライ「そ、それはわかってるけど――」
ヤライ「お。さっそく、あの子供が通行人に声をかけ始めたぞ。お手並み拝見といこうか」

ようじょ「おねえちゃん、おねえちゃん」
お姉さん「あら。どうしたの?」
ようじょ「あのね、あのね。あっちにおんがくかのひとたちがいるでしょ?」
お姉さん「え……? あ……、そうね。4人組のコたちよね?」
ようじょ「うん。それでね、あのひとたちはみんなきょうだいなの」
お姉さん「へぇ……。そうなの」
ようじょ「うん。それでね、それでね。
    いちばんうえのおにいちゃんと、さんばんめのおにいちゃんは、こいびとどおしなんだって」
ヨウジ「ワイドショーに出たいワケじゃねーよッ!!」
2008/04/08(火)