バトナージ(その1)

ヤ・ユ・ヨ・ミ「ポケモン・ア・ゴーゴー!」

ユウキ「フィオレ生まれの4人組が海を越えてやってきたぜー!」
ミライ「知ってるあなたはいいお客。昔の悪役4人組!」
ヤライ「だけど今では心をチェンジ! ご覧の通りのビジュアル系!」
ヨウジ「バンドの名前は? ゴーゴー4!
    声小さいぜ? ゴーゴー4!!
    恥ずかしがらずに! ゴーゴー4!!!」

オタク「うぉー! ミライたんサイコーなりー!」
ようじょ「ごーごーよん、かっこいー!」
ユウキ「応援ありがとうございます!
    でも、ゴーゴーよんじゃなくて、ゴーゴーフォーなので――」
オタク「ミ、ミライたん! ぜひぜひサインをお願いするでござる!」
ミライ「あ、うん……。――さらさらさら〜っと……」
ようじょ「ユウキおにいちゃんに、ふしぎなあめあげるー」
ユウキ「あ、どうも……」

オタク「ありがとうなり! これは家宝にするでござるよー!」
ようじょ「ユウキおにいちゃんばいば〜い!」
ユウキ「これからも応援よろしくお願いします!」

ヨウジ「――ふぅ……。新作に触発されて路上ライブを再会したのはいいけどよ。
    どうにも人が集まらねェなぁ……」
ミライ「うん。3日目だっていうのに、お客さんは2人だけ。しかも同じ人たち」
ユウキ「やはり、現実はゲームのようにはいかないということですか……。
   ――不思議なアメでも食べましょうかね……」
ヤライ「知っているか? ユウキ。
    不思議なアメを人間が食べると腹痛を起こすらしいぞ」
ユウキ「え? そうなんですか? じゃあヨウジにあげます」
ヨウジ「いらねーよ」
2008/03/27(木)
ミライ「やっぱりここは、テレビ関係者と親しくなってコネを手に入れるべきじゃないかしら?」
ユウキ「なるほど……。しかし、コネなどというものが安易に手に入るとは思えないのですが」
ヨウジ「だよなぁ……。有名人が変装もしねェで街中を歩いてるなんてこたぁねェだろうし」
ミライ「そ、そうよね……。そんな漫画みたいなご都合主義、現実に起こるはずが――」
ヤライ「待て! 諦めるのは早いぞ、兄妹たち」
ユウキ「え……? ど、どういう意味ですか?」
ヤライ「今俺が手にしている本……。この本に先ほどの観客たちが載っていた」
ヨウジ「な、なんだと!? 『たち』ってこたぁ、2人ともか!?」
ヤライ「その通りだ」
ミライ「ウ、ウソでしょ? そんな都合のいい話しがあるワケ――
    だいたいそれってポケモンの攻略本じゃない!
    その本で紹介されてるってコトは、よっぽどの有名人よ!」
ヤライ「うむ。天は俺たちを見放してはいなかった。
    まさに天文学的確率……。ゴーゴー4は圧倒的にツイている!」
ユウキ「――す、凄いです!
    僕たちのファンがそれほどの有名人となれば、まさに大きなコネとなりますよ!」
ミライ「ええ! テレビとまではいかなくても、確実にわたしたちのプラスになるわ!」
ヨウジ「おおうッ! やる気が出てきたぜェッ!
    ――そ、それで兄貴! さっきの2人はいったい何者なんだ!?
    一見、タダの子供とオタクだったぞ!?」
ヤライ「焦るな、焦るな……。――えぇと……。あった。このページだ」
ミライ「はやく、はやくぅ!」
ヤライ「今の2人はだな――」
ユウキ「ゴクリ……」

ヤライ「ポケモンバトリオのステージ2−3と4−17Aに登場する人たちだ」
ヨウジ「マイナー過ぎて分かんねーよ!!」
2008/03/27(木)
ヨウジ「だいたいオレたちより知名度が低いっつー時点でコネにゃあならねェだろ!」
ヤライ「むぅ……。――ならばヨウジ。おまえには何か考えがあるのか?」
ヨウジ「え……。い、いきなり考えっつわれてもなぁ……」
ヤライ「ホラ見ろ。自分は無策のクセに、人に向かって、いい案を出せと喚く。
    おまえの悪いクセだ」
ヨウジ「ん、んだとゴラァッ!」
ミライ「お、落ち着いてよ2人とも!」
ユウキ「そうですよ。こんなところで言い争っても不毛なだけじゃ――」
???「あの……。ちょっとよろしいでしょうか?」

ユウキ「え……? あ、はい! なんですか?」
和服の女性「じつは先ほど小さな女の子から、
    皆さんが路上でライブをしていると耳にしまして――」
ユウキ「はぁ……」
和服の女性「その女の子から、皆さんのライブはとても魅力的なものであると伺いました」

ミライ「ヤ、ヤライ兄さん。
    もしかしてそのコ、ユウキ兄さんに不思議なアメをくれたあのコかしら?」
ヤライ「おそらくな」
ヨウジ「ヤ、ヤライ兄ィ。コイツはもしかしてファンを増やすチャンスじゃね?」

和服の女性「それで、ご迷惑でなければ、
    私にも皆さんのライブを拝見させていただけませんか?」
ユウキ「え、ええ……。別に構いませ――」
ミライ「はい! 喜んでー!」
ヨウジ「へへへ……。アンタ、運がいいぜ。
    なにしろオレたちゃあ、いずれ世界にはばたく(予定の)グループだからな!」
和服の女性「わぁ……。それは楽しみです」

ユウキ「ど、どうしたんですか? 突然みんな、ハイテンションで語りだしたりして……」
ヤライ「いいから合わせるんだ。今は1人でも多くファンを増やしたい時期だろ?」
ユウキ「まぁ……。それはそうですけど……」
2008/03/29(土)

ミライ「ホラホラ、ボサッとしない! 楽器の調整は済んだの?」
ヤライ「もちろんだとも!」
ユウキ「あ……。ちょっと待っててくださいね」
ヨウジ「急いでくれよ、ユウキ兄ィ。
    カネ――じゃなかった。ファンが待ってるんだ」

和服の女性「――フフフ……。とても楽しみです。
    私は普段、こういった催しにはあまり縁が無いもので……」
ヨウジ「そうなのか。まぁ、今日は存分に楽しんでってくれや」
和服の女性「ええ。そうさせていただきます。
    ――それにしても珍しいですよね。4人という人数の多さは」
ヨウジ「ん? そうかぁ? このくらいの人数が、どこも基本だろ」
和服の女性「そ、そうなのでしょうか? テレビで拝見したものは大抵1人か2人。
    多くても3人でした」
ヨウジ「はぁ? 1人ィ? からかうのはよせよ。
    それともアンタは世間知らずなお嬢様ってか? ハハハ!」
和服の女性「せ、世間知らず……。――お、お恥ずかしいことに、よく言われます。
タマムシジムは、そういった俗世とは縁遠いものでして――」

ヤライ「おい! ユウキの準備ができたぞ。いつでも大丈夫だ」
ヨウジ「おっと! ――それじゃあさっそく始めるか。今日は楽しんでってくれよな!」
和服の女性「は、はい! 私1人のために、わざわざありがとうございます! 芸人の皆さん!」
ヨウジ「お笑いライブじゃねーよッ!!」
2008/03/29(土)