部屋編その5(1部) 配達員「お届け物でーす」 ユウキ「あ、どうも! いつもご苦労様です!」 ◆ ミライ「父さんからよね? 今日はなにかしら?」 ユウキ「なんでしょう……。これは……パソコンですかね?」 ヤライ「ふっふっふ……。俺の手紙を読んだ親父がさっそく手を打ってくれたらしいな」 ヨウジ「ど、どういうことだよヤライ兄ィ。部屋から出られないのに手紙が親父に届くわけ――」 ヤライ「甘いぞヨウジ。手紙をポストに投函する方法は1つじゃ無いだろう?」 ヨウジ「な、なんだと……?」 ミライ「ま、まさかヤライ兄さん……」 ヤライ「フフフ……、そのまさかだ。手紙を運んだのはさっきの配達員!」 ヨ・ユ・ミ「な、なんだってーッ!?」 ヤライ「おまえら好きだなそれ」 ユウキ「な、なるほど……。この部屋に自由に出入りできるのは今のところあの配達員のみ。 考えましたね、兄さん」 ヤライ「だろう?」 ミライ「でもヤライ兄さん。パソコンなんか送ってもらっていったい何をしようっていうの?」 ヤライ「よくぞ聞いてくれた妹よ。今回、俺は素晴らしい商売を考え付いたんだ」 ヨウジ「す、素晴らしい商売だと……?」 ヤライ「そのとおりだ。部屋から出られないという障害をものともせず、確実に儲かる商売をな」 ユウキ「確実に……儲かる?」 ミライ「そ、その商売っていったい……」 ヤライ「聞いて驚くなよ?」 ヨウジ「もったいぶってないではやく話せよ!」 ヤライ「気の短い弟だな。まぁいい、よく聞け」 ユ・ヨ・ミ「ゴクリ……」 ヤライ「まず、パソコンをネットショッピングにつなぐ」 ミライ「ネットショッピング?」 ヤライ「ああ。次に初回限定版と書いてあるゲームやCDを片っ端から購入する」 ユウキ「か、片っ端から……?」 ヤライ「そうだ、1つ残らずな。そしてそれらをネットオークションで売りさばけば――」 ヨウジ「そりゃ転売だろ!!」 2008/02/26(火) ヨウジ「またパソコンやってんのか、ヤライ兄ィ」 ヤライ「ああ。ユウキに習い始めてから3日、だんだんと使い方が分かってきたぞ」 ヨウジ「ふーん……。ま、オレにゃパソコンの使い方なんてわかんねーし、 めんどくせぇから覚える気もねーけど」 ヤライ「相変わらずの怠惰っぷりだな。ところでユウキとミライは?」 ヨウジ「あの2人なら、この部屋に脱出経路が無いか気になるらしくて台所を調べてるぜ」 ヤライ「そうか。それにしてもこの部屋に張られてる光の壁は本当に不可解だな。 なぜ配達員だけが自由に出入りできて、俺たちは跳ね返されるのか……」 ヨウジ「もしかしてそのことについてパソコンで調べてるのか?」 ヤライ「いや、今は匿名掲示板でバンド活動についての知識を仕入れて―― ん……? んんん!?」 ヨウジ「な、なんだよいきなり大声出して……」 ヤライ「い、いや、すまん。――ちょっとこれを見てくれ」 ヨウジ「モニター? なんでだよ?」 ヤライ「いいから見ろ」 ヨウジ「んだよ、めんどくせーな……。――えぇと、なになに?」 345:短パン小僧の名無しが勝負を仕掛けてきた!: バンドとか現実を見れないクズのやることだろwww そんなくだらねーことやってねーで働けよwww ヨウジ「な、なんだと? コイツ……」 ヤライ「許せないな。俺たちの夢をくだらないなどと……」 ヨウジ「あ、あたりめーだ! このまま黙ってられるかよ! 兄貴!」 ヤライ「わかってるさ。今から俺がこの礼儀知らずにガツンと言ってやる」 ヨウジ「お、おう……。任せたぜ!」 そりゃあ、おまえにとってはくだらないことに見えるかもしれないさ。 だけど1つ忠告しておく。俺の夢をバカにするヤツはなんぴとたりとも許さない。 こんど同じような口をきいてみろ。ただじゃ済まんぞ。 ヤライ「――よし……、こんなもんか……」 ヨウジ「で、できたんなら早く投下しようぜ! コイツがモニターの前でニヤニヤしてると思うと、はらわたが煮えくり返りそうだ!」 ヤライ「まてまて、最後の仕上げが残ってる。――えぇと……ココをこうして……」 ヨウジ「(なんだ? 名前欄……?)」 ヤライ「ストリートミュージシャンのヨ・ウ・ジ……と……。 ――よし! これで完成だ!」 ヨウジ「成りすますなよッ!!」 2008/02/29(金) |