部屋編その5(1部)

配達員「お届け物でーす」
ユウキ「あ、どうも! いつもご苦労様です!」



ミライ「父さんからよね? 今日はなにかしら?」
ユウキ「なんでしょう……。これは……パソコンですかね?」
ヤライ「ふっふっふ……。俺の手紙を読んだ親父がさっそく手を打ってくれたらしいな」
ヨウジ「ど、どういうことだよヤライ兄ィ。部屋から出られないのに手紙が親父に届くわけ――」
ヤライ「甘いぞヨウジ。手紙をポストに投函する方法は1つじゃ無いだろう?」
ヨウジ「な、なんだと……?」
ミライ「ま、まさかヤライ兄さん……」
ヤライ「フフフ……、そのまさかだ。手紙を運んだのはさっきの配達員!」
ヨ・ユ・ミ「な、なんだってーッ!?」
ヤライ「おまえら好きだなそれ」

ユウキ「な、なるほど……。この部屋に自由に出入りできるのは今のところあの配達員のみ。
    考えましたね、兄さん」
ヤライ「だろう?」
ミライ「でもヤライ兄さん。パソコンなんか送ってもらっていったい何をしようっていうの?」
ヤライ「よくぞ聞いてくれた妹よ。今回、俺は素晴らしい商売を考え付いたんだ」
ヨウジ「す、素晴らしい商売だと……?」
ヤライ「そのとおりだ。部屋から出られないという障害をものともせず、確実に儲かる商売をな」
ユウキ「確実に……儲かる?」
ミライ「そ、その商売っていったい……」
ヤライ「聞いて驚くなよ?」
ヨウジ「もったいぶってないではやく話せよ!」
ヤライ「気の短い弟だな。まぁいい、よく聞け」
ユ・ヨ・ミ「ゴクリ……」

ヤライ「まず、パソコンをネットショッピングにつなぐ」
ミライ「ネットショッピング?」
ヤライ「ああ。次に初回限定版と書いてあるゲームやCDを片っ端から購入する」
ユウキ「か、片っ端から……?」
ヤライ「そうだ、1つ残らずな。そしてそれらをネットオークションで売りさばけば――」
ヨウジ「そりゃ転売だろ!!」
2008/02/26(火)

ヨウジ「またパソコンやってんのか、ヤライ兄ィ」
ヤライ「ああ。ユウキに習い始めてから3日、だんだんと使い方が分かってきたぞ」
ヨウジ「ふーん……。ま、オレにゃパソコンの使い方なんてわかんねーし、
    めんどくせぇから覚える気もねーけど」
ヤライ「相変わらずの怠惰っぷりだな。ところでユウキとミライは?」
ヨウジ「あの2人なら、この部屋に脱出経路が無いか気になるらしくて台所を調べてるぜ」
ヤライ「そうか。それにしてもこの部屋に張られてる光の壁は本当に不可解だな。
    なぜ配達員だけが自由に出入りできて、俺たちは跳ね返されるのか……」
ヨウジ「もしかしてそのことについてパソコンで調べてるのか?」
ヤライ「いや、今は匿名掲示板でバンド活動についての知識を仕入れて――
    ん……? んんん!?」
ヨウジ「な、なんだよいきなり大声出して……」
ヤライ「い、いや、すまん。――ちょっとこれを見てくれ」
ヨウジ「モニター? なんでだよ?」
ヤライ「いいから見ろ」
ヨウジ「んだよ、めんどくせーな……。――えぇと、なになに?」

345:短パン小僧の名無しが勝負を仕掛けてきた!:
バンドとか現実を見れないクズのやることだろwww
そんなくだらねーことやってねーで働けよwww

ヨウジ「な、なんだと? コイツ……」
ヤライ「許せないな。俺たちの夢をくだらないなどと……」
ヨウジ「あ、あたりめーだ! このまま黙ってられるかよ! 兄貴!」
ヤライ「わかってるさ。今から俺がこの礼儀知らずにガツンと言ってやる」
ヨウジ「お、おう……。任せたぜ!」

 そりゃあ、おまえにとってはくだらないことに見えるかもしれないさ。
 だけど1つ忠告しておく。俺の夢をバカにするヤツはなんぴとたりとも許さない。
 こんど同じような口をきいてみろ。ただじゃ済まんぞ。

ヤライ「――よし……、こんなもんか……」
ヨウジ「で、できたんなら早く投下しようぜ!
    コイツがモニターの前でニヤニヤしてると思うと、はらわたが煮えくり返りそうだ!」
ヤライ「まてまて、最後の仕上げが残ってる。――えぇと……ココをこうして……」
ヨウジ「(なんだ? 名前欄……?)」

ヤライ「ストリートミュージシャンのヨ・ウ・ジ……と……。
    ――よし! これで完成だ!」
ヨウジ「成りすますなよッ!!」
2008/02/29(金)